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2001/12/21
プリオン病に効果的なペプチドの開発について


プリオン病に効果的なペプチドの開発について
 今年九月、千葉県で飼育されていた牛で、わが国で初めてBSEが確認され、社会的不安が日増しに高まったことはご承知のとおりであります。BSEとはプリオンと呼ばれるたんぱく質が異常化したものが増えることにより、脳細胞が死滅し、行動や運動の異常などの症状を示して、最後は死に至る病気です。

 伊藤ハム中央研究所・ヘルスサイエンス事業部医薬品グループでは、BSE関連の研究を行っていますが、かねてよりアルツハイマー、喘息治療薬として研究を進めてきました「PACAP<注1>・VIP誘導体<注2>」というペプチドがBSE(牛海綿状脳症)に対しても治療及び予防効果があることを発見しました。
 これは異常プリオンの部分ペプチドPrp(106-126)を用いた毒性実験で、弊社開発ペプチド「PACAP・VIP誘導体」が極めて微量で毒性を低下させるというものです。通常、異常プリオン蛋白を神経細胞に添加すると、この毒性により神経細胞は死滅してしまいます。この神経細胞の死滅を、本ペプチドを添加した場合、細胞の自然死とほとんど同レベルにまで抑制することができました。今後、動物実験で効果を確認後、弊社が開発した投与方法を応用し実用化したいと考えています。
 プリオン病は厚生労働省が「希少疾病治療薬」として認めている範疇にあり、今後は本ペプチドがこの治療薬として、社会福祉に広く貢献出来るものと考えております。
 伊藤ハムでは、本技術を発展させて、BSEを含めたプリオン病に対し、次の三つのアプローチによる総合研究として捉えていくことにしております。

【1】診断キットの開発
英国での実験・研究の結果、脳、脊髄、眼および回腸遠位部以外、例えば、肉・牛乳・乳製品にはBSEの感染性はないということがわかっています。しかし、現在のBSE検査は簡易的な手法を組み合わせて行っており,しばしば擬陽性を示します。そこで、さらに特異性の高い、高感度かつ簡便なBSE診断キットの開発計画をしています。

【2】ワクチン療法開発(予防)
米国エラン社は、アルツハイマー治療薬としてβ-アミロイドのワクチンを投与することで治療の可能性があることを報告しています。このβ-アミロイドの原薬はAPC社(アメリカンペプタイドカンパニー 百パーセント伊藤ハム子会社)が供給しています。このワクチン療法と同様の考え方をプリオン病にも応用します。

【3】治療薬開発
前述のとおり、今後は弊社が開発しました「PACAP・VIP誘導体」を用いて、試験管実験の結果を基に、動物実験を進めます。この分野では第一人者であります九州大学医学部(堂浦克美助教授)との共同研究及び開発を進めプリオン病治療薬として開発してまいります。

<注1>
PACAP: 一九八九年、米国チューレン大学の有村章博士が発見したペプチドの一種で、強力な神経保護作用を有している。
<注2>
VIP:一九七九年、豚の腸から検出されたペプチドの一種で筋弛緩作用を有している。気管支喘息治療薬として開発中。

【資 料】
VIP/PACAP関連特許一覧(PDF:144kb)